micorunの自己紹介

前にバズった時の記録代わりの自己紹介と、普段考えていることを雑多に書いてます。

0j デッサンとデフォルメ

漫画やアニメの面白さ、オリジナリティ、好みなどはデッサンとデフォルメの比重にあります。

 

デッサンとは、写実的、現実的、物理法則や理論に則っているという意味で、リアリティーのある表現になります。
デフォルメは、抽象的であったり、デザイン性、簡略的、別解釈や表現技法の変更などによる、対象の意図的な変化を意味します。

これらは絵に限った話ではなく、漫画で例えるならストーリー、コマ割り、ジャンル、キャラクター、心理描写、絵柄や台詞回しなど、全ての要素に当てはめることが出来ます。

また、デッサンとデフォルメのどちらが優れているかという話ではなく「どちらの表現が優先されているか」という視点で見た方が、色んな作品を見ても楽しめるようになると思います。

 

実際の作品を例に挙げてみると『新世紀エヴァンゲリオン』のアニメは舞台設定やエヴァを除く軍事兵器、オペレーションなどはデッサン的でリアリティーがありますが、エヴァや使徒などは、その強さや仕組みがかなり非現実なのでデフォルメされていると言えます。
この現実と虚構を上手く折り合わせたり、作品展開として活かすことが面白さに繋がると思っています。
今はエヴァよりもシン・ゴジラの方が分かりやすいかもしれません。

また、同じエヴァンゲリオンでもアニメ版と漫画版では違い、漫画版では舞台設定や兵器の描写はアニメそのままに近いので、比べてしまえば見劣りしてしまいます。
しかしキャラクターの内面や心情は、アニメよりもマンガ版の方がかなり濃く描かれていて、登場人物への感情移入のし易さは、マンガ版の方が優れています。

 

他の作品を挙げると『賭博黙示録 カイジ』だと、人物絵の描写は勿論強いデフォルメですが、黙示録だけにおいては全体を通して心理描写はかなりデッサン的であると言えます。

特に人間競馬の話での、前の相手を押して落とすかどうするか、というカイジ自身の善と悪の葛藤のシーンは、言葉には出来ない心の奥の闇がグロテスクに表現されていて、そういう意味では後に続く電流鉄骨渡りよりも恐ろしく思えます。

逆にデッサンとデフォルメが上手く噛み合わない例で言えば、賭博堕天録での兵頭和也が持ち出した、借金の支払いの代わりに人間の部位を切るルーレットを持ち出すシーンなんかは、内容としては恐ろしいですが、それを和也が行う理由として「金持ちの変態だから」という理由しかなく、本来はデッサン力のある表現(ここでは説得力)が必要な場面に、内容の薄いデフォルメが用いられているため、他の話に比べれば恐怖感があまり伝わってきません。


このように、本来はデッサン的に表現するべき場所でデフォルメ表現をしてしまったり、その逆の表現をしてしまうと、読者との間に齟齬が生じてしまう原因になります。

あくまで個人的な解釈なので、これが正解だとか絶対的なものではありません。


これは作品を読むのは勿論、選ぶときにも有効に使える見方で「この作品は、ここがデッサン(デフォルメ)なんだな」と判断しながら見ていくと、より一層作品の表現を素直に受け取ることが出来るようになります。

漫画の読み方が下手な人、アニメを見るのが下手な人は、大抵このデッサンとデフォルメの視点が間違っていることが、理由の一つとして挙げられます。

分かりやすく言えば、機動戦士ガンダムを見て「こんなロボットが飛び回れるわけないじゃん」と感想を述べることです。
これは言っていることは正しい(デッサン的)が、描かれているのはSF(デフォルメ)だからです。
デフォルメを楽しむべき部分で、デッサンを求めたり視点を置いてしまえば、誰でもくだらない、つまらないものと思えてしまって当然の話です。

どこにデッサンを求めて、どこがデフォルメであって欲しいかというのは人それぞれ好みによって違うので、自分の好みを判別しておけば、好みの作品を見つけやすくなったり、好きな作品の傾向も分かるようになるかもしれません。


また、これは作る側の立場でも言えることです。
自分の得意としているもの、表現したいものや要素、デッサン寄りなのかデフォルメ的なのか、それらを意識して作品を構築していくだけでも、テーマがはっきりしたり、作品の魅力が上がるきっかけになると思っています。
(私自身もこの方法で自己分析をしながらこの記事を書いています)

pixivの講座には、絵のデッサン力を上げるものがかなり多くありますが、絵としてのデッサン力の高いスキルを持っている人は無数にいて、既にコモディディ化(当たり前と言えるぐらいに増えすぎてしまっている)しているので、それよりも付加価値を付けられる部分のデッサン力を高めたり、デフォルメを磨いていった方がいいと個人的には思います。