記憶について ~正しい記憶の仕組みと覚え方~
・記憶はタンスの引き出しのように仕舞われるのではなく、レゴブロックのように断片的になっていて、思い出す時に(専門的には想起と言います)それらを瞬時に組み合わせて記憶として形成されます。
・人間の作業と同じで、組み合わせる回数が多いほど完成までの時間は短縮される(脳もラクをしたいのです)ため、思い出せば思い出すほど記憶として定着されます。勉強や楽器の練習で反復練習が有効なのは、このためです。
・覚えておいて欲しいことは、記憶は思い出す時に記憶され、思い出す回数が多いほど定着するということです。
・これが何を意味するかというと、記憶というものは、簡単に書き換えられてしまうということです。
・例に出したレゴブロックを思い出してください。設計図も資料も何も無いまま「これでクルマを作ってください」と言われた場合、あなたはクルマを忠実に組み上げることが出来るでしょうか?
なんとなく四輪の乗り物には誰でも仕上がるかもしれませんが、クルマ好きや詳しい人で無い限り、実際のクルマとはかけ離れた物が出来てしまうと思います。
・では、どうすれば忠実にクルマを組み上げられるでしょうか?
・それは最初の条件にある通り、設計図や資料があれば、時間は掛かるとしても何も見ないよりは確実に再現度は高くなります。
・これを記憶の仕組みに置き換えると、何も見たり聞いたりせず、我流で何かを行うということが、如何に無謀かということが分かってきます。
・何かを記憶しようとする時に大切なのは、覚える対象の正しい知識や順序を知ること。そしてよく思い出すことです。
・勉強が出来たり、仕事の効率がいい人は、人より多く努力しているのは勿論ですが、ただ作業量を多くしているわけではなく、記憶の反復を省エネすることによって脳への負担を減らし、さらにその空いた余裕で新しい記憶の形成を行なっているとも言えます。
・最初のスタートはどんなに頭がいい人でも、一つ一つの工程を確かめながらでないと出来ないため、時間が掛かります。
しかし次第にそれを理解し、法則性や仕組みを学ぶことによって、より速く、より正確に行えるようになります。
・頭がいい人というのは、この一連の流れが早い人とも言えます。
○○○
・過去の記憶、自分自身にまつわるあらゆることは、記憶を元に脳が作っていると仮定します。
・しかし過去の出来事や体験も、思い出す方法が変われば、簡単に記憶が書き換わってしまうことが、人の頭の中では当たり前のように起こっています。
・特に反復回数が少なかったもの、混同しやすいもの、そして古ければ古い記憶ほど、曖昧になるのは勿論、時には全く違った記憶として定着してしまうこともあるのです。
・「あの頃は良かった」と昔の思い出が良く思えたり、事故やトラブルなどのような心理面への強い影響のある出来事というのは特に、ネットやテレビで得た情報やドラマなどの物語と混ざってしまうことが、無意識にもあるのです。
・僕が危険だな、と思うことは、体調が悪くなった時にすぐにネットで調べることです。
・ネットにある医療関係の情報は、ともかく信ぴょう性が薄いです。DeNAのWELQ問題がその典型例であったりします。
・特にがんのような命に関わる病気であったり、うつ病などの人によって症例が異なったりまだ未解明の面が多いようなものは、とても危険です。
・よく「うつ病診断」や、最近で言えば「発達障害のテスト」などがネットには沢山ありますが、あのようなもので判断してしまうのはむしろ洗脳に近いです。
・症例や初期症状をネットで検索していくうちに「これは私にも当てはまっている」「もしかして私は病気なのでは…?」と思っていくと、感情面でも良くないのは勿論、記憶の混同が起こり、本当に病気になってしまうことだって十分ありえるのです。
・以前読んだとあるエッセイ漫画には、ある精神障害に関してネットに出回る大量の情報を調べて病院に掛かった結果、その障害だと診断されたと描かれていましたが、僕にはネットの情報によってそのような記憶が形成されてしまった、としか思えませんでした。
・「病は気から」というのは、あながち間違っていません。
・病気に限らず、答えが多様で人の体質やその時の状況によって大きく異なる情報、例えばダイエットや運動、投資や占いなどといったものは、安ければ安いほど信ぴょう性が悪くなります。
・かと言って高ければいいと言うものでもありません。
・記憶の仕組みを元に言える大切なことは、定着した記憶は思い出せば思い出すほどラクに思い出せるようになりますが、定期的に思い出す方法を変える、見直すことが大切になります。
・具体的に言えば、勉強であれば同じ分野でも異なる専門家の意見を聞いたり、興味のない分野や新しい物事を初めてみたり、人間関係でも見知った関係の人たちばかりと顔を合わせるのではなく、初対面の人と多く接するような機会や場所に出向くことも、記憶を再構成する上ではとても効果的です。
・僕は1日の終わりにその日にあった出来事(主に楽しかったこと)を手帳に書いているのですが、印象的な出来事が無ければ、それこそ3日前の記憶ですら、手帳に書いた内容を読まなければ曖昧になっていることが日常的にあります。
・そんなの忘れっぽいだけじゃないの? と思われた方は、ぜひ試してみてください。Twitterの呟きなどでもいいです。
・何気ない記憶というものは、大人になればなるほど、簡単に忘れ去られていきます。
・印象的な記憶が残ることは、良い思い出が残っていいと感じるかもしれませんが、人生はいつも楽しく刺激的であるとは限りません。むしろほとんどの人が、良くも悪くもない日常を過ごしていることが大半だと思います。
・つまり、何気ない日常を切り捨て、印象的な記憶ばかりを残すというのは、過去の記憶が1日もある100日も変わらなくなってしまうことだと、僕は思っています。
・何にも無かったつまらない1日だったと思う日でも、手帳に記録しようとすると、些細なことであっても実は結構楽しかったり、面白かったことを思い出したりします。それが楽しくて続けているのもあります。
・そういった日常の気付きが、長い目で見れば人の人生観、価値観や考え方を形成するだけではなく、1日1日に充実感を持って生活出来ることに繋がると思っています。
○○参考にした書籍 ○○
記憶力を強くする―最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方 (ブルーバックス)
- 作者: 池谷裕二
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/01/19
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脳はなぜ都合よく記憶するのか 記憶科学が教える脳と人間の不思議
- 作者: ジュリア・ショウ,服部由美
- 出版社/メーカー: 講談社
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